俺は自分を知っている。


ヴァンパイアになっていると判っている。

だから眞樹を受け入れてようとしたのに。

逃げだしていた。
よりによって、まことの傍に瞬間移動した。
いやさせられたのかも知れないが……


俺はパニクった頭の中で、それでも冷静に判断した。


(ヤバい!! 俺の中のヴァンパイアの血が騒ぐ!! まこと逃げろー!! 俺から逃げろー!!)


でも、まことは其処にいた。
握った俺の手を離さずに其処にいた。


そしてその両手を精一杯に広げて俺の全てを受け入れようとしていた。




 俺は再びまことの用意した大カンバスの上で彼女を襲っていた。
まことは身動きもせずに、俺の全てを受け入れた。


苦しみ、のたうち回りながら……
それでも俺はまことの血を求める。
俺は身も心もヴァンパイアになっていた。
ヴァンパイアとしての運命を受け入れていた。
眞樹が用意した筋書き通りに。


「fake of fate。造られた俺の運命よ!! 願いわくば神の御前でこの身を葬りさりたい」

俺は必死に、神に救いを求めていた。




 その時、光が見えた。


青みがかった紫……

それは目映いオーラだった。

大天使ミカエルのオーラだった。


俺はやっと解放されると思い、両手を広げた。

大天使ミカエルの持つ剣で、俺を突いてほしかった。
ヴァンパイアの血を絶やすには、心臓を目掛けて鉄の杭を刺す。
何かの文献でそう読んだ覚えがある。


「お願いだ、俺を突いてくれー!! ヴァンパイアの血から解放してくれー!!」

俺は両膝を付き、両手を高く掲げた。


「大天使ミカエルよ……。そなたの左手にあるその剣で、この胸を刺したまえ。この血を、おぞましいヴァンパイアの血を全て放出させてくれ」