俺がケーゲーからのメールを受け取ったのは、卒業式が行われるはずの日の早朝だった。


(今度は何を仕掛けるつもりだ?)

正直言って怖い。
だけど、逃げてばかりいたのでは何も始まらないと思ってもいた。


俺はあの日以来、まことを抱けない。
抱いてはいけないと思っている。

あの絵の中に、俺は確かにヴァンパイアの血を感じた。

だから、又襲いそうで恐いんだ。

まことを殺してしまいそうで恐いんだ。


俺の唯一の理解者、慈愛に満ちた天使そのもののようなまことを……


メールを見ながら、上をみつめた。
二段ベッドの上部で寝ているまことを思いながら。




 ケーゲーからのメールはやはり眞樹の頭脳の象徴、第二のアンビエンス・エフェクトだった。


暴走する頭脳を押さえるだけで精一杯のはずなのに、どうしても俺を抹殺したいらしい。


俺は覚悟を決めて携帯と向き合った。


赤坂奈津美。
石川真由美。
懐かしい名前が其処には並んでいた。

その途端に、フラッシュバックのように凄まじく入れ替わる画像。

水着に制服、派手派手私服。
これでもかと言うように脳に直接インプットしてくる。

俺があの日と同じように瞬間移動してくるように眞樹が仕掛けたサブリミナル効果。


俺は目まぐるしい替わる画像の中に、学校の屋上があるのを見つけていた。


(ああだから屋上だったのか?)

俺はただ眞樹の謀略に引っ掛かっただけだったのだ。




 卒業式前。
俺は学校の屋上にいた。
今度は正々堂々と十八禁ゲームが出来ることを良いことに、アンビエンス・エフェクトによって呼び出されていたのだった。


「このヴァンパイアのなりそこないが」
眞樹は信じられないことを言った。


(ヴァンパイアのなりそこない……もしかしたらトマトジュースに血液を入れたのはコイツか? 母や父ではなかったのか? 眞樹お前は何処まで俺を愚弄する気だ)


俺はもう躊躇いはしなかった。
堂々と眞樹の頭脳の中に入り込んだ。