何処かで携帯電話が鳴っている。
あちこち探したが見当たらない。


(あれっ!? 何処だー?)

俺の頭はまだ朦朧としているのだろうか?


(何時もは学校から帰って来たら直ぐに充電機に入れるのに……あーあ、一体何やってんだ俺)

パニクっていたら鳴り止んでしまった。


(ヤバい! 携帯が見つからなけりゃ、今日生きられないよ。コンビニだって行けないし、弁当を買いにも行けないんだ)

外出禁止令を無視してまで遊びに行く度胸は俺にはなかった。


(その上、携帯ゲームも出来なくなる!)

俺はマジで焦っていた。


(落ち着け、落ち着け)

俺は胸に手を置きゆっくりと指先でリズムを刻んだ。




 昨日のことを良く思い出してみる。


(学校で鞄の中に確かに入れた。馬鹿か俺は。だから鳴ってるんだ)


頭の中で整理してみる。


(俺は昨日疲れていて、大好きな携帯ゲームもしないで眠ってしまった)


一つ一つ記憶を紐解く。

俺は何故疲れたのかを考えた。
同じクラスの望月眞樹と言う友人がバックレて、日直の仕事を一人で遣らされたからだ。

うん、そうに違いない。


だって急に居なくなったんだよ。
俺に何の断りもなく……。


友達……
ううん……、親友だと思っていたからショックだったんだ。




 望月眞樹……
俺の憧れてた犬を飼っていたヤツだ。

アイツには何でも言えた。

まだ恋もしたこともないってゆう秘密まで。


それにしても、昨日は休んだ人が多くかったな。だから大変だったんだ。


(そうか!? あれが休校の原因か?)


本当なら眞樹と俺が一緒の日直なんて有り得ない。

でもみんな休んでいたから俺に日直が回って来た。

仕方なく引き受けたのに、それなのに………。

そんなこと考えていたから余計疲れちゃったんだ。

だから鞄から出さな……。


(あっ、そうだ鞄!)

ずっと足元に起きっぱなしの鞄……
俺は早速中に手を入れた。


(あった! ……ん?)

手にした携帯電話は何かが違った。
俺は気になって、携帯を隅々までチェックした。


(あれ、このシールどっかで見たな?)

俺は電池パック取り替え口の上に貼られた、小さなプックリしたチワワのシールを見逃さなかった。