俺はただ、平穏な日々が続くことだけを願っていた。


でも眞樹は俺を落とし入れようとして、有りとあらゆるトラップを用意していた。

それに俺は気付かなかった。
いや相手にしなかっただけだ。
俺は眞樹を心配していた。
何時もトップであることを要求される眞樹を哀れんでいた。

それが眞樹の患気に触れた。

眞樹は俺をこてんぱんにやっつけようと思ったようだ。


教団にいる幹部に問題集を制作してもらい、二人で対決しようと画策したのだ。

有事対策頭脳集団。
そう幹部の頭脳は、世界でもトップクラスだったのだ。


そのテストは無記名で、眞樹と松本君が受けるとされていた。

そう……
松本君なら俺達の関係から事件の全容まで知っていたから頼みやすかったのだ。

松本君は二つ返事で引き受けてくれたようだ。


松本君も一馬同様、俺の本当の実力を知りたくなったのだ。


会場は俺の部屋の下。
アンビエンス・エフェクトを開発したケーゲーの本部だった。




 俺は堂々と正面から有事対策頭脳集団のアジトへ入って行こうと思った。

其処は何時か来た携帯ショップだった。


お店の前には幌付のトラックが停まっていた。
上部を見ると少し凹んでいた。


「あっこれか。俺とまことの命を救ってくれてありがとう」

時間を見ると、あの日俺達が落ちた時間らしかった。


(此処にもしこの幌付きトラックがかなったら? 俺とまことの運命は違っていたのかな?)

ふとそう思った。


「あら、坊っちゃま、お帰りなさい」

店員は、俺を眞樹だと勘違いしたようだ。


「そうだった。あの日は確か……」
俺は又、初めて此処に訪れた日のことを思い出していた。


俺は眞樹の行為が嬉しくて、同じ携帯を選んでいたのだ。

でも、親父さんの店だと知って手続きは眞樹に頼んだのだった。
でも店には誰もいなかったんだ。


(きっと眞樹は俺を誰にも会わせたくはなかったのだ。でも俺を抹殺するために携帯が必要だったのだ)