俺は、妻となったばかりのまことから望月一馬の生い立ちを聞いていた。

勿論まことも全てを知っているはずもないことなのだが。


本当は熱心なキリスト教信者だと言うことだった。

育った施設のせいではない。

一馬は自分の生を神によって与えられたものだと真剣に考えたのだ。


働きながら勉強をして、牧師の資格も取った。

でも、それでも生きてきた意味が解らなかった。
生かされた意味も解らなかった。

だから、自ら神を作り上げたかったのだ。

それが本当の眞樹の誕生の秘密だったのだ。


まことの通っていたフリースクールには子供向けに翻訳された聖書が何冊か置いてあったらしい。

だからあの時、教会で祈りを捧げられたのだ。


そんな中でまことは結婚を夢見ていた。
何時か言いたい。
神に捧げたい。
そう思い、結婚の誓いの節を心の中に刻み付けたのだった。


受胎告知によって授かりし生命。
それはやがて分裂を繰り返し、闇を照らす光になる。


それは望月一馬が掲げた一説。
一馬は本当に有事対策頭脳集団を作り上げようと考えていたのだった。
それは宇宙人のためではない。

この国の、この地球の未来のためだったのだ。




 何故一馬がキリスト教の行事にこだわったのか、詳しい経緯は知らない。
でも一馬は、第二の救世主を自らの手で創造したかったのだ。


fake of fate。
例え紛い物であっても、自分の力で造り出せると思っていたのだ。

そのためには眞樹ではなく俺が必要だったのだ。


俺は第二のキリストになる運命だったのだ。
だから同じ誕生日に……

だから受胎告知の日にもこだわったのだ。


マリアローズから産まれた眞樹は、日本一の頭脳が要求された。
それは一馬のせいではなかった。
一部の取り巻きの点数稼ぎのためだったのだ。
余りにも一度に叩き込まれた知識は、やがて眞樹の頭脳の中で暴走を始める。
あのアンビエンス・エフェクトを作り上げた時点で既にそうなっていたのかも知れない。
だから双子の兄弟であるはずの俺を抹殺しようとしたのだった。


俺の存在そのものが眞樹の脅威だったのだ。