望月一馬はどうやら俺に興味を持ったようだ。
俺の人となりを育ての母から盛んに聞き出そうとしていた。
でもそれは眞樹が一番恐れていたことだった。

双子のどちらかを後継ぎとしたいと望月一馬が考えていると思っていたようだった。

俺に全くと言って良いほど、そんな気がないことを知りながら。
それでもまだ疑っていた。


もし一馬が自分を見放したら……
そんなことばかり考えていたようだった。

だから余計に、俺を抹殺しようとしてアンビエンス エフェクトを開発したなどと言えるはずはなかったのだ。




 「受胎告知より授かりし生命。やがてそれは分裂を繰り返し、人々を照らす光となる」

一馬は、自ら書いた黙示録を提示した。


一馬はは知っていたのだ。
卵の主が双子だったと言う事実を。


実は一馬は母から聞いていたのだった。
小松成実の双子の姉妹が死産だったと言う事実を。

でもマリアローズに受胎したはずの卵が本当に双子になったことには気付かなかったのだ。

そのマリアローズが、若林結子だったと言うことも。


一馬はやはり、薄々は感じてはいたものの確証はもてなかったようだ。


でも本当に双子だったと知り、大いに感心を寄せたのだった。


日本一の頭脳を持つ眞樹。
小松成実二世の呼び声の高い俺。

二人を見比べる絶好のチャンスだと思っていたようだった。




 ――受胎告知より授かりし生命。
それはやがて闇を照らす光になる――


それはクリスマスウェディングの時、望月一馬主席の言葉。
実は、俺はそれに感銘を受けていた。


(そうだ、俺はその光になろう。宇都宮まことのための光になろう。望月眞樹のための光になろう。望月眞樹を暴走させないための礎(いしずえ)になろう。俺達三人は乳兄弟なのだから。二人は双子の兄弟なのだから)


それでも運命の歯車は別方向へと回り出す。

そう元々作られた物だった。
今此処にある全てがfakeだったのだ。