クリスマス……
十二月二十五日。
イエス・キリストの正式な誕生日ではない。
聖書には、何も書いていないらしい。
でも受胎告知の日だけははっきりしていた。

それはお告げの日。
三月二十五日だった。

代理母である若林結子も又その日に受胎告知を有事対策頭脳集団のトップ、望月一馬より授けられた。

その日から母の苦悩は始まった。


本当は佐伯真実を愛しながら、博士に恋い焦がれ振りをする。

自分のせいで真実から家族を奪わないためだった。


それでも……
宇宙人として生きることに決別したくてマリアローズと名乗ったのだ。

家族が欲しかった。
自分の子供が欲しかった。
だから敢えて代理母になったのだった。

でも結子は恐れていた。
子供が産まれたら、もう母では無くなると言うことを。


それでも、俺と眞樹の母になる道を選んでくれたのだった。


せっかく定着した胎児を保護するために、若林結子は宇都宮に移り住んだ。
もし流産なんてことがあったら、佐伯真実に申し訳が立たない。
結子はそればかり考えていた。

其処で結子は宇都宮まことと出会い、初乳を与えた。
それはきっと宇都宮まことへのクリスマスプレゼントではなかっただろうか?
この時結子はきっと宇都宮まことの母になることを決めたのだと思った。


眞樹より……
俺達より先に、宇都宮まことに生きるための抵抗力を与えたかったのだ。

何故なら、まことの命を救うことを佐伯真実が最優先させていたからだった。


これからまことは有事対策頭脳集団で育つことになる。

そのための生命力。

でも本音は、まことの母になりたかったのだ。


その日は……
俺と眞樹の誕生日は、宇都宮まことと若林結子の絆が生まれた日でもあったのだ。

そして、まことを自分の子供として育てたいと強く願った日だったのだ。