私は、一瞬なんて言われたのか、理解できませんでした。


観客達が総立ちで、歓声をあげたときに、やっと告白されたことに気がつきました。
ゆっくりと、嬉しさがこみあげてきました。
そういえば、健介君の方から、好き、と言ってくれたことは、これが初めてです。


やだ。嬉しい。泣きそう。すごく嬉しい。


喜びのあまりに、頭がぼおっとして、どうすればいいのか分からなくなりました。
そんな私の背中を、アトミック南斗が、お父さんが強く叩いてくれました。
「おうおうおう、ほら、行けよ」
「…………う、うん!」


私は笑顔を浮かべながら、リングに上がり、ロープを飛び越えると、健介君に駆けより、思いきり抱きつきました。


「ち、ちょっと、南斗さん」
健介君が、顔を真っ赤にしておろおろとします。私はそんな彼の胸に、顔をうずめました。


汗の匂いがしました。


血の臭いもしました。


肌がすごく熱いです。


そうです。私は何を不安になっていたのでしょうか?健介君は、私のために、あんなに戦ってくれたじゃないですか。私はぬふふふと笑いました。そして、ふと考えました。





…………キス、しちゃおっかな?




そう考えた瞬間、私の頭は沸騰しました。心臓の鼓動が高鳴り、激しく緊張し、気が付けば私は、健介君の体を逆さに担ぎ上げ、
「健介!死ねやコラァッ!!」
と叫びながら垂直落下式DDTで彼を頭からリングに叩きつけていました。