校舎裏へ着くと、俺は虚をつかれた。


桜の木の下には、不良ではなく、ひとりの女生徒が待っていた。


同じクラスの、南斗晶さんだ。クラスで、一位ニ位を争う美少女だと、男子が噂していたのを覚えている。


なんだ。不良の果たし状じゃなかったのか。


どうも空手漬けの毎日を送っているせいで、殺伐とした考えばかりが頭に浮かんでしまう。いかんいかん。


俺は、彼女に話しかけた。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
「んーん、わたしもいま来たばかりだから」
そう言う南斗さんの目は、なぜかうるんでいた。花粉症だろうか。それにさっきから硬い表情で下を向いていた。腹が痛いのだろうか。


「それで、南斗さん、話って何かな?」
「あ…………、うん」
南斗さんは顔をあげた。


目があった。