「おりゃあっ!」
頭部をマットに叩きつけられる直前に、俺は逆さにされた体勢のままマットに正拳突きを当てた。それが衝撃を逃がし、受け身となり、バックドロップによる頭部のダメージを減らした。


起き上がり、すぐさま離れようとした。


ところが、田山が足を引っ張る。
「立たせねえぞ」
「くっ」
俺を引き倒すつもりのようだ。寝技の争いになると、こちらが不利だ。
足をつかまれた体勢のまま、俺は田山の顔面を数回殴った。しかし田山はびくともしない。
「プロレスをなめるなよ」
足にへばりついたまま、田山はじりじりと体勢を整える。足の間接を狙っているようだ。


俺は、笑った。
「おまえこそ、空手をなめるなよ」
歯を喰いしばると、俺はひゅっと息を吐き、足に力をこめた。
そして、へばりつく田山をくっつけたまま、足を持ち上げ、その足で、リングコーナーの鉄柱に向かって、蹴りを放った。


俺の足にへばりついた田山は、背を鉄柱に強打した。
「ぐっ」
力がゆるんだ。


俺は田山の腕から足を抜き、すぐに下がって距離をとった。


田山はぬっと立ちあがった。
「おもしれえなあ。おまえ」笑っていた。
「そうか」
「いやいや、格闘家なんてのは、型にはまった動きしかできねえんだろなって、なめてたんだけどよ。おまえは」


タックルがきた。


しかし俺は冷静にそれをかわす。


かわされた田山は頭をかいた。
「ありゃ、駄目か」
「殺気が丸出しだ」
「じゃあ、こんなのはどうだ?」


笑みを浮かべたまま、田山は構えの形を変えた。


それを見て、俺は目を細めた。
「なんのつもりだ?それは?」