試合会場には、二つのリングが設置されています。


その二つのリングで、私の試合と健介君の試合が同時に行われるのです。


父が考案した、少し変わったマッチメイクです。



会場に、音楽が鳴り響きました。


『凛として咲く花の如く』


私の入場テーマです。


軽快な音楽にあわせて、私はリングに向かって入場通路を歩いていきます。
途中、もうひとつのリングの方を横目で見ました。
健介君と田山は、すでにリングインしていて、それぞれのコーナーに立っていました。
私は視線を戻しました。


ロープを飛びこえて、私もリングインします。
青コーナーには、空手着を身につけた、ひとりの少女がいました。
私の対戦相手、角田由美です。


かわいらしい女の子でした。まるでリスのような、つぶらな瞳をしています。


この娘が戦うの?

正直とまどってしまいました。
選手コール、ボディチェック、審判のルール説明を終えて、わたしと角田由美は、それぞれのコーナーに戻りました。





ゴングが鳴りました。