(南斗晶)

日曜日になりました。


「ちょっと、お父さん!何よこれ!?」
準備中の試合会場に、わたしの怒声が響きわたりました。





「おうおうおう、どうした晶?」
リング下にいた私の父、アトミック南斗は、振り向きました。
「どうしたもこうしたもないわよ!これは何なのよ!?」
わたしは手に持っていたポスターを乱暴な手付きで広げました。今日の興行の宣伝ポスターです。それには、散りばめられたハート模様、私と健介君の顔写真と共に、こんな宣伝文句が載っていました。



『リング上に愛の血しぶきが乱れ飛ぶ!若い恋人達が、カップルの未来をかけて死闘を繰り広げる!負けたら即破局!青春ラブラブ異種格闘技戦デスマッチ!今夜開催!こうご期待!』


最悪です。


こんなポスターが、試合会場の周りに、町中のあちこちにたくさん貼られていたのです。ランニング中に見つけた時、思いっきり転倒してしまいました。


「おうおうおう、おれが考えたんだ。どうだ?いいキャッチコピーだろ?」
「どこが!?愛の血しぶきとか意味よく分かんないし!もう!私ならまだしも、なんで健介君の写真まで勝手に使うのよ!」
「いいじゃねえか、恋人同士なんだから!つうしょっとってやつだ。つうしょっと!」
父は変な発音でつうしょっとと繰り返しながら大声で笑いました。他のレスラー達もひゅーひゅーとはやしたてます。
「もおおおおおっ!」
私は真っ赤になって叫ぶと、客席用の折り畳み椅子を片っ端から父に向かって投げつけました。