カルマの坂【短編】

少年は住みかへと帰っていた。
少年に家はない。金もない。
しかし、町の大人達がゴミとして捨てていったもので、住みかを作り、少年は1人暮らしていた。

「ククク…、ちょろいもんだぜ。」
少年は、いつものように盗んできたものを食べ始めた。
しかし、少年には、盗みに対する罪悪感がまったくといっていいほどなかった。
少年は生きるために盗みを覚えた。
金がなく、食べ物を買えない少年には、盗むしかなかった。
少年にとって盗むことは生きることなのだ。

「うめぇ〜」
そのとき、ゴミの中から1枚の紙切れが風で飛んできた。
少年はその紙切れに、ふと目を向けた。
その瞬間、少年の動きが止まった。
『人は皆、平等……』
この言葉だけが少年の目に映った。
「…人は皆、平等……。
平等だと!
あぶく銭でのうのうと遊んで暮らしている町の大人達と、今日の食べ物でさえ盗まなければ生きていけないオレが平等…?

笑わせんな!何が平等だ!
ふざけんじゃねぇ!!どこのペテン師だ。
…こんなもの!」
少年はびりびりとその紙切れを破り棄てた。
「くそっ!」
少年は手当たり次第に物を投げた。
「ちくしょう……」
少年は、静かに怒りに震えていた。