マジ可愛くねぇと思いながら、そんな感情腹ん中に押し込んで席を立つと

 岡崎の手を取り、空いた右手でカバンを持つ。

 上にもデカイつくりだから中腰になっても割りと動きやすい。

 リムジンのドアの横でドライバーが何とも言えない表情で俺らのことを見た。




 だけどそれも一瞬。




 そんな顔で主人を見るのは“失礼”だからな。

 岡崎の家には門があって、奴はその前で立ち止まる。

 真ん中から左右どちらかの取ってを引き開くタイプの門だから、

 端っこにいる俺より岡崎のが断然取っ手に近いけど、どうせ俺が開けることになる。






 こいつにとって彼氏ってのは下僕のことか?






 門を開けてから手を引いてドアの前まで送ってやった。

 ここで開いてやるのはお門違いだぞ?

 玄関の庇の前で俺は岡崎の手を放した。


 「ありがとう」


 文句言われる前にカバンを差し出したら、すました顔でこうだ。

 エスコートさせんなら、テメェも礼儀を尽くして微笑くらいしろ。


 「八時に学校に行くから」






 迎えに来いって?

 上等だ。






 「分かった」


 にこやかに笑ったけどやっぱりそれも無視。

 しかし岡崎は玄関の前で突っ立ったままだ。


 「入んねぇの?」

 「入るよ!!」


 ドコに怒らす要素があったのか不明だが、

 語気を荒げてそう言って岡崎は家の中へ消えた。



 意味不明な上にウザいし可愛げもないけど、

 こういう女とゲームすんのはリアルに楽しめそうだ。






 二十年間、他人の何倍も頑張ってきたんだから

 今回は好き勝手やらせてもらうぞ、ジジイ。