「お前さぁ……相談できる奴とかいるわけ?」

 「相談することなんかないよ」

 「…………あの……お前まだ俺に用あんの?」

 「ない」

 「じゃあな」

 「待って!」


 口が勝手に寿を呼び止めた。


 「何だよ!」


 ちょっと不快そうな寿の声。


 「今日、何かあったんでしょ? 友だちとして話し聞くよ」

 「バカかお前は。手札読まれたら俺はゲームに負けるだろ?」

 「ゲーム?」

 「美希が俺に告って始めたんだろう?」


 いやに挑戦的な口調で寿は私を勘ぐるように問う。


 「今は一時休戦」

 「タイムアウトこそ有益に遣わないと、俺は勝負に負けそうだ」

 「まっ負け……」


 そっそれは……………

 つまり………


 「分かってんのか? 美希が始めたのはブラフゲームだぞ?」


 笑い声が聞こえそうなほどの口調。

 分かんない、寿が全然分かんない……


 「ブラフゲームって何?」

 「広く言えば心理戦」

 「狭く言ったら?」

 「…………辞書引け。こんな実のない会話は時間の無駄だ。切るぞ」

 「分かった」


 そう言うしかなかった。

 電話してみたけど、私は鷹槻さんの……寿の役に立てたのかなぁ。

 実感が何もない。

 何もなかったから寿が言ったことを調べてみることにする。


 ブラフは“虚勢”とか“はったり”。


 心理戦だってことは教えてくれたのに、これを言わないってことは―――――




 ――――――寿。

 やっぱり不器用なのは、あんたなんじゃん。