わっ!! 何で電話!?


 「もっもしもし……」

 「良かった。マジ出てくんね~かと思った。今日は悪かったな。こっちの手違いで」


 明るい口調で喋るのは彩並寿。

 寿……で、いいのかなぁ。

 ジュラクって呼ばれてた気がする。


 「お見合いに連れてくなんて、ひどいよ、ジュラク」

 「その名前で呼ぶな!!」


 急に寿の語気が荒くなる。


 「何で?」

 「仕事上の名前だから」

 
 すごいね、仕事用の名前があるんだ。

 でもその名前呼んだくらいで、どうしてそんなに語気を強めるの?


 「話し戻すけど今日のことは、俺を陥れるためのジジイの作戦だったんだ。
 けど、エリシアに話したら分かってくれて、全部反故になった」

 「へ~ぇ。それに私は利用されたんだね」

 「人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇよ」


 ムッとしたような感じですかさず言い返した寿だけど、ムッとしたいのは私の方だ。


 「俺につっかかってばっかいるけど、マジで俺に惚れてんの?」

 「そっそりゃあ……」

 「お前何もねぇのな。あんなことになったら、普通ショック受けて
 寝込むとか、恨みがましいこと言うとかすんじゃん」

 「程度の低いその辺の人と一緒にしないでくれる?」

 「その辺て、お前は俺のその辺を知ってるのか?」

 「どうせ、ろくでもないんでしょ。知りたくもない」

 「寂しいこと言うなよ。俺は美希に知って欲しいのに」


 唐突に寿はトーンを落として、しっとりと紡ぐ。


 「ジジイんトコから帰るとき、美希の表情暗かったから、
 相当傷つけたカモと思って、俺カナリ悩んだぞ?」


 え、私……え? ちょっと…………


 「けどな、俺会社しょって生きてかなきゃなんねぇから、俺とつき合うと
 こんなことしょっちゅうだ。嫌だったら、引き返せるうちに距離置こう」

 「えーとその……」


 どうしよう……寿、私にマジなの?

 私は?

 どうしよう……奈々のことがあって、

 懲らしめたくて寿に近づいたけど……