『あの場所に行こう…。』


心の中でそう思いながらあたしは走っていた。

あの木のある場所へ…。


風が髪を揺らすそして日差しに照らされる木はとても綺麗だった。


「いつ見ても綺麗…。」


そう呟いてると寝息が聞こえた。


「誰かしら…?」



恐る恐る木に近づくと気持ち良さそうに寝て
る男の人がいた。


『この人もこの場所が好きなのかしら。』


そう思いながら木と男の人の顔を交互に
見た。


そうしてるうちにいつのまにか男の人に
手を伸ばしていた。


『触れる…。』


そう心で思った瞬間…。


「君は誰…?」


そう言われた瞬間触れようとしたことが
恥ずかしくなった。


「ごめんなさい…。」


そう言うと逃げるようにあたしは走って
いた。


心臓がバクバクしてりんごのように顔を
真っ赤にしてこの何とも言えないモヤモ
ヤした気持ちを胸に走り家の扉を開けた。


「ただいま…。」


「おかえり。顔真っ赤だけど大丈夫?」


「大丈夫だよ。」


「ならいいけど…。」


少しおばあちゃんの心配する顔が見えたが
今はそんなことも気にする余裕もなかっ
た。


自分の部屋に入るとベットに寝転び考えた。


あたしどうしたんだろう…。


この気持ちはなんなんだろう…。


あの人のことが頭から離れない…。


胸がドキドキして苦しい…。


真っ赤な顔を手で隠しながらこの気持ちの
変化をあたしは探していた。