spiral "eternal"



「…風。」無意識に出た名前


呟きが小さかったため、誰もその名前には気付かなかった


「私は大樹の中で、今までの光景を全て見てきました。
荒れた世界がもう一度蘇り、私達の街のように笑顔で溢れて…。その中に、魔物も天使も居ないのが残念ですが、いつかまた笑い合える時代が来ると信じていたのに…。

なのに…レミエル様は目覚めてしまった…。」


大切な、幼馴染みの姿で


そう言って、亜未の瞳からは堪えていた涙が溢れ出した


「本当にごめんなさい。私達があの時ちゃんとレミエル様を止められていれば、貴方達の街はこんな事にならなかったのに…。」


「謝る必要はない。君達は命を懸けてそいつを止めようと動いてくれた…それは事実なんだから。」


愁は一歩近付き、泣いている亜未に視線を合わせるために片膝をついた


「今危険に晒されているのは俺達の街だ。なら、俺達が命を懸けて戦う事に何の問題もない。

だから、君が謝る必要なんてないんだ。」


「…ありがとう。」涙を堪える為に俯いて


亜未は掠れた声でそう言った


「手段が絞られてきたな。ただ倒すだけじゃ、無実なその魔族を殺しちまう。」


「あぁ…あくまで敵は、その魔族の中にいるレミエル1人だけだ。」


「その、前に魔族を救ったっていう人間の幼馴染み…そいつは?彼女も魔族もこの時代に生きてるんだ。何かの間違いで、そいつもこの時代に生きてるとしたら、その能力で…。」