月と太陽

「タケルが高校に入学する時だったかな。お母さんがそれをタケルに渡したのは」

亜利沙はそう言って、わたしの胸元で光る三日月を指差した。

「いつか、タケルが大切にしたいと思うような人が現れたら、その人に渡しなさいって、母さんが言ってたのよ」

わたしは言葉を失った。

悪い意味ではない。

「大切にしたいと思う人」というフレーズが頭の中にこだましていた。

目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛んだ。

涙が溢れ出しそうだ。

大切にしてくれているのは感じていたが、それはただ友達だからだと思っていた。

お父さんの仕事柄、わたしみたいな人を放っておけないだけだ、そう思っていたのに、自惚れてはいけないと思っていたのに、わたしの想いを良い意味で裏切られた気分だった。