月と太陽

「な、なによ。梨子、からかってるんでしょ?」

わたしが少し怒り気味に言うと、梨子は笑った。

「なんで怒るのよー。別にからかってないわ。本当にタケルはしずくを心配してたんだから」

それは知っている。

亜利沙も言っていたし、嘘だとは思っていない。

ただ、少し、照れてしまっただけだ。

「まぁ、そのうち気付くわ。タケルはしずくを大事に思ってる。特別なのよ、しずくは。今は信じられないかもしれないけどね」

梨子はそう言って、わたしから視線を外す。

そして、窓の外を見た。

オレンジ色に変わっていく太陽の光に目を細めた。

「わたしもそうだった。自分に自信がなさ過ぎて、匡人の愛の受け止め方がわからなかった」

呟くようにそう言った梨子は、フッとわたしへ視線を戻し「戻りましょ」と玄関へ向かって歩き出した。

わたしも続いて歩き出したが、居間のテーブルの前で一度足を止めた。

テーブルの上に置かれた2人の福沢諭吉がこっちを見ている。

わたしはポケットから、さっき連れ去った1人の福沢諭吉を2人の元へ返した。

そして、早足で梨子のあとを追った。