月と太陽

「ごめんね、ついて来てもらっちゃって」

わたしの家に向かう途中、わたしは言った。

梨子は「気にしないで」と優しい顔して見せた。

こうして、梨子と2人になるのも、話すのも初めてだ。

あんなにわたしを嫌っている素振りをしていたのに、一体どうしてだろう。

「今まで、ごめんね。しずくに酷い態度とってきちゃって」

真っ直ぐ前を見ながら、梨子が言う。

わたしは黙って、首を横に振った。

「なんかね、しずくを見てると前の自分と重なって、少し恐くなったの」

「前の、自分って?」

「わたし、今はこうして普通に過ごしてるけど、少し前までは違ったの。人を避けて、笑うことを忘れて…、あぁ、今も人付き合いは苦手だけど、これでも良くなった方なのよ」

梨子はそう言って、少しぎこちなく笑った。

彼女のぎこちない笑顔は、少し前まで笑い方を忘れていたことを物語っていた。