月と太陽

亜利沙とお母さんとリビングに入って来たお父さんは、わたしの姿を見つけると優しく微笑んだ。

シワ一つない黒いスーツにクリーム色のネクタイが第一印象の「紳士的」を思い出させる。

「何か飲む?」

お父さんが脱いだ上着を受け取りながら、お母さんが言った。

お父さんは「いや、いらないよ」と言いながらネクタイを外した。

そして、1人掛けソファーに腰を下ろした。

きっとそのソファーは、お父さんの定位置なのだろう。

「しずくちゃん、幾つか質問したいことがあるんだ。答えてもらえるかな?」

落ち着いた低い声でお父さんは言う。

ふと、すぐそばに立つ亜利沙の方を見ると、亜利沙は「大丈夫よ」と言うように小さく頷いて見せた。

「…はい」

わたしはそう返事をして、静かに深呼吸をした。