月と太陽

わたしは玄関のドアが閉まってしまう前にと、慌てて「お邪魔しました!」と言った。

ゆっくりと閉まっていくドアの隙間からは、笑顔で手を振る亜利沙とお母さんの姿が見えた。

階段を下まで下りると、タケルは掴んでいたわたしの腕を解放し、そのまま両手をポケットの中にしまい込んだ。

「わたしは大丈夫なのに」

呟くようにそう言うと、タケルは「俺が送りたいんだよ」と呟き返すように言った。

「タケルって、なんでそんなに優しいの?」

タケルと並んでゆっくりと歩きながら、わたしは言った。

「優しいか?俺」

「それが優しさじゃなかったら、一体なんなのよ」

タケルは空を見上げると、考える仕草を見せた。

そして「ほっとけないんだよ、しずくを」と言った。