月と太陽

「なぁ、しずく」

タケルがわたしの名前を呼ぶ。

わたしはタケルの方を見ると、続きの言葉を待った。

「もうすぐ、あの家に戻らなくちゃいけないけど…、戻っても、いつでもうちに来い。今のしずくの部屋は、あのままにしておくって、父さんが言ってた」

「あのままって…」

「入院患者を受け入れるのは、しずくで最後にするらしい。だから、あの部屋はしずくにあげるってさ」

優しい口調で言うタケル。

嬉しかった。

形上、退院して家に戻らなくてはいけないけれど、日下家がわたしの居場所であることに変わりは無いということだ。

「母さんも、しずくを家族のように思ってるってさ」

「家族」という言葉がやけに耳に残り、わたしの心を震わせた。

わたしにあるようで、なかった家族。

それが自分の一方通行ではなくて、受け入れてもらえた実感と確信が何より嬉しかった。