月と太陽

「ば、馬鹿って何よ!」

照れ隠しに怒ってみる。

タケルは、照れ隠しに怒って尖らせたわたしの唇を親指でなぞった。

そして、不意打ちにキスをする。

一瞬のことだったが、確かにタケルの唇を感じた。

「で、俺に訊きたいことって?」

わたしの顔を覗き込みながらタケルは言った。

「タケル、今月誕生日なんだって?何で教えてくれなかったのよ〜」

「あぁ、もしかして亜利沙から聞いたのか?」

「うん。誕生日だって知ってれば、プレゼント用意したかったんだけど…」

だんだん小さくなっていく、わたしの声。

タケルは落ち着いた優しい声で「しずくが一緒に居てくれることが、何よりのプレゼントだ」と言った。