月と太陽

「タケル…?」

わたしは部屋の中に問い掛けた。

部屋の中を覗いて見ると、こちらに背を向けるようにベッドに横になるタケルがそこに居た。

わたしは部屋に入り、ドアを閉めた。

そして、そっとタケルに歩み寄る。

タケルの顔を覗いてみると、タケルは目を閉じて静かな寝息を立てていた。

寝ているだけだった。

そのことにホッとする自分がいた。

わたしはベッドの端に腰を掛け、しばらくタケルの寝顔を眺めていた。

タケルの寝顔を見るのは初めてだ。

わたしはついタケルに触れたくなって、タケルが起きてしまわないように、そっと頬に手を触れた。

すると、タケルが寝返りをうち、身体をこっちに向けた。

わたしは驚きのあまり、無意識に両手を上げる。

テレビドラマでよく見る「手を上げろ!」とでも言われたかのように。