月と太陽

幸ちゃんは無表情でこっちへ歩いて来た。

わたしを守ろうとする梨子の肩に力が入っているのがわかった。

しかし、幸ちゃんはわたしたちの横を通り過ぎ、タケルたちが殴り合うところへ真っ直ぐ向かって行った。

それに気付いたロン毛男は「おう、幸介じゃねーか!」と手を止めて言った。

みんなの視線が幸ちゃんに集まる。

「お前ら何やってんだよ」

低い声で幸ちゃんは言った。

ロン毛男は砂で汚れたズボンをパンパンと叩いた。

「何って、お前が大好きなしずくちゃんの奪い合いだよ」

「やめろって言っただろ。しずくには手を出すな」

フっと鼻で笑うロン毛男。

その表情は、怪しげで人を馬鹿にしたような目をしている。

「幸介、お前はいつからそんなに偉くなったんだ?フラれたくせに、かっこつけてんじゃねーよ!」

わたしのところから幸ちゃんの表情は見えない。

しかし、幸ちゃんは拳を握り、震わせるその肩からは怒りが感じられた。