階段を上り切り、タケルは自分の部屋に戻ろうとする。

わたしは自分の部屋のドアの前で、ドアノブに手をかけたタケルを呼び止めた。

「…タケル」

タケルはドアノブに手をかけたまま、こっちを向き「ん?」と返事をした。

「一つ訊きたいことがあるんだけど…」

「訊きたいこと?何?」

「昨日、おやすみのあとに5回ノックしたよね?」

わたしがそう言うと、タケルはこっちに向けていた視線を逸らした。

まるで、そのことに触れて欲しくなかったかのように。

わたしは訊いてはいけないことを訊いてしまったのかと、少し後悔したが、それでも5回ノックの意味が知りたかった。