月と太陽

彼と約束をしてしまい、教室に戻って来た。

先に立ち去った彼は、教室には居なかった。

「しずく凄いよ!日下くんと喋ったなんて!しかも、日下くんから焼きそばパン貰って、一緒に帰る約束までしちゃってさー!」

麗佳は興奮気味に言った。

「くさかくんって、さっきの人?」

わたしはそう言って、自分の席につく。

麗佳は、花柄の小さいバッグからお弁当箱を出すと、わたしの机の上に置いた。

「そう、日下タケルくん。見るからにモテそうでしょ?クールで背が高くて、顔も整ってる!」

麗佳はお弁当を開けながら続けた。

「でも、日下くんの笑顔なんて初めてみたよ!あたし、1年の時も同じクラスだったけど、日下くんが笑ったのなんて見たことないもん!」

目を見開いて言う麗佳の様子や口調から、彼、日下くんの笑顔がどれだけ貴重なのかが伝わってきた。

そして、この焼きそばパンも。