月と太陽

「せっかくだから、貰えば?」

麗佳が言った。

麗佳は彼に対して、明らかに好意がある態度を見せた。

「で、でも…」

「2つ買ったんだけど、1つ余る予定なんだ。貰ってくれないかな?貰ってくれると助かるんだけど」

彼はそう言って、優しく微笑んだ。

クールなイメージだった彼だか、その笑顔でイメージが一気に逆転した。

「じゃあ、お金払います。いくらですか?」

わたしが財布を開けようとすると、わたしの財布の上に焼きそばパンを置いた。

財布を開けることを阻止するかのように。

「いらないよ。俺が無理に貰って欲しいって頼んでるだけだから」

「タダでなんて貰えません!」

わたしが少し強めに言うと、彼はクスッと笑った。

笑われたことに恥ずかしさが込み上げてくるのがわかった。

「じゃあ、お金はいらないからもう一つお願いを聞いてもらえるかな?いい?」

「…わかりました。何ですか?」

彼は片方の口角を上げて笑うと、手をズボンのポケットに滑り込ませた。

「今日、一緒に帰ろう。約束だよ」