月と太陽

当時、幸ちゃんの転校先は「遠いところ」としか聞いていなかったが、まさか北海道だったとは思ってもいなかった。

「何?知り合いなの?周りの奴らはチャラチャラしててダサいけど、彼はかっこいいわね」

わたしの耳元で麗佳が囁いた。

色々と説明をするのが面倒なので、わたしは「まぁね」とだけ答えた。

友人と無邪気にじゃれ合う幸ちゃんは、あの小さい頃の記憶の幸ちゃんとさほど変わらなかった。

わたしの幼い頃を知る人に再会するなんて、何だか変な気分だ。

すると、賑わいだ廊下の向こう側から、バタバタと誰かの走る音が聞こえてきた。

ふとそっちに目をやると、こっちに向かって走って来る梨子の姿があった。

梨子だけかと思いきや、その後ろには梨子に腕を掴まれて困り果てた表情を浮かべる佐野くんの姿があった。

彼はお化け屋敷の宣伝のため、校内を徘徊しているはずだった。

「しずく!ちょっと来て!」

梨子がわたしに手招いた。