「よお、圭!」
あぐらをかいて一番手前に座っている少年、龍紀が僕に向かって手を軽く上げる。
僕は「おはよー」と言いながら、龍紀の右側に座った。
「うわあ、こんなに採れたんだ!」
と、沙由が広げたビニール袋を覗き込んでいる涼音が声を上げ、すぐに苦しそうに咳をした。
一回、二回。
それから落ち着けるようにトントンと胸を叩く。
僕の向かい側に座っている涼音は、上半身は起こしているものの、下半身は布団の中。
きっと、すぐに倒れてもいいようになんだろう。
「涼音さん、また風邪?」
沙由がすぐ横から涼音の顔を覗き込む。
「あー、うん。ちょっとね~……」誤魔化すように苦笑いする涼音。「すぐ治すからね。あ、沙由ちゃん、あたしに近づくとうつっちゃうよ?」
「いえいえ! あ、沙由、トマト洗ってきますんで。台所貸してもらえますか?」
愛想のいい笑顔を浮かべ、ビニール袋を掴んで立ち上がる沙由。
「いいよ。ありがとね」
「いえいえ~!」さっきと同じ言葉を繰り返し、沙由は台所へ向かう。
そこへ、僕の右隣に座っていた手毬が立ち上がり、「私も手伝う」と、沙由を追いかけていった。

