足を踏み出すたびに、足元の砂利が鳴る。


「ねーお兄ちゃん」

「んー?」


僕より半歩後ろで歩いている沙由は、ガサガサと音をたてながらビニール袋を差し出してきた。

歩きながら、その中を覗き込む。

「ああ、トマト?」

「うん。みんなで食べようよ」

そう言ってニッコリ笑う沙由。

ビニールの中には、数十個のプチトマトがコロコロと踊っていた。


このトマトは、家で採れたものだ。

この村での食料は、ほぼ自給自足。

最低限の食料は、村の中心部にある田畑で作られたものが配られるけど、育ち盛りの僕たちにはあまりにも足りないので、自分の家でも作っている。


こればかりは不器用もなにも関係ないので、育てる役割は主に僕だ。

自分で言うのもなんだけど、とっても美味しいと思う。


まあ、僕もこれが大好きなわけで。


僕はビニールに手を突っ込んだ。


「あ、ちょ、ダメだよ!」

「いいじゃん一個ぐらい!」


僕の右手の先めがけて飛びついてくる沙由をかわし、指先で持っていたトマトを口に放り込む。

噛むと同時に甘酸っぱい香りが口いっぱいに広がる。


そのトマトの甘さに満足して笑う僕に、沙由は呆れたように微笑んだ。