・・・・・・。


あと少しで死ぬ。

そう思った人間は、奇行に走る。


目の前にある壁を、自分を閉じ込めている壁を、自分をカミサマに殺せと言っている壁を壊したくて、生贄は手首を縛っている布を引きちぎり、壁に掴みかかる。


ガリガリガリガリガリガリガリ


ビクともしない。

暗闇の中でも、依然、壁がそそり立っているのがわかる。

さっきよりももっと強く引っ掻く。


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッッッッ


爪が剥がれる。

皮膚がすり減る。


心の奥底で、『絶望』という魔物が蠢き出す。


狂ったように、壁を壊すように、引っ掻く。


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリッッッッッッッッッ!!!!!


先端に白いものが見える。

肉がちぎれる。

骨が折れる。


必死に叫んでも、さるぐつわに吸収されていく。

狂う。狂う。狂っていく。


絶望の淵に立たされた生贄を、カミサマは容赦なく、腹に手を突っ込む――――――。