「いいえ、気にしないでください。」 彼は聞き取ってくれた。 「こんな夜遅くに。ご両親も心配するでしょう。」 ・・・。 ポンポンと頭を撫でられた手をつかむ。 「いないの。両親なんて。小さいころに事故でなくした。」 私・・・、何言ってるんだろう。 初対面の人にこんなこと話すなんて。 でも、彼はそんな私を優しく抱きしめてくれた。 それが紫雨との出会いだった。