『じゃ、また昼休みな?』
教室の前でぎゅーっとハグをして、先輩は自分の教室へ向かってしまった。
あーあ…同じ学年が良かった…。
そしたら、もっと一緒にいられるのにぃ…
「なぁに、落ち込んでんのよ。ってか、あのビジュアル先輩のどこが良い訳?」
未だに分からない。
そういった顔を浮かべる親友の早苗。
『ビジュアル先輩じゃないもん!!優センパイだよー!』
「いや、名前とかどーでも良いし。ね、ほんまにビジュアル先輩が好きなの??桜、モテモテなのにビジュアル先輩なんかには勿体無いよ〜」
だから、ビジュアル先輩じゃないって…。
私の大好きな彼氏であるビジュアル先輩もとい優先輩は前髪が異常に長くて、いっつもギターを抱えている。
で、アカペラサークルの部長さん。
髪型がビジュアル系の人に似ているので私たちの学年で勝手についたあだ名が“ビジュアル先輩”。
本人にとっては、別に取るに足らない問題らしいのだが…。
「…ら!…くら!桜ってば!!」
『…ほぇ?』
「だーかーら!ビジュアル先輩のどこが好きになった訳?ってか、いつ出会ったのよ?!」
あーあ…今日は、逃げられそうにもない。そっと時計に目をやると、まだSHR開始までには時間がある。
仕方ない…話すしかなさそうだ…。
私が、優先輩に出会ったのはこの学校に入学する少し前のこと。