今日のターゲットは…、イタコの姉妹。
田舎のイタコに高級品なんてあるのか?
幽霊に憑かれたらどうしよう。なんてあんな先生みたいに臆病じゃない。
怪盗魔鵺と化した霧は、目的を定めて跳躍した。

まだ日が暮れてないので、それを見た人は「魔鵺を見た」と言うだろう。
白昼…とまでは言わないが、日が出てる時に怪盗が現われるのはそうそう居ない。

魔鵺はひとっとびで、車で一時間もかかる目的地に着いた。正直、忍者でも無理がある。
途中、「鳥だ!飛行機だ!」と言った奴も居ないことはない。
魔鵺は、“怪盗”では危険なので、変装──彼のモンタージュはピカイチ。それぞれのパーツを上手く組み合わせ、一つ一つ被らないようにしている。──をして、そのイタコの姉妹がいる山に向かった。

「ごめんください」
魔鵺は例のイタコの住む家に来て言った。
「はーい」
まず聞こえたのは若い声。二十歳ぐらいだろうか?
やってきたのは純粋そうなお嬢様。
「あの、どちら様でしょうか?」
「私、こういう者です」
魔鵺は名刺を渡した。
『旧樹探偵事務所所長、旧樹実』
魔鵺が細工して作った名刺だ。
「モトキ…?」
「モトキ、ミノルです」