あの日。

 初めて棗さんと出会ってから、もうすぐ9年が経つ。


「ねぇ、棗さん」

「んー?」

「結婚しないの?」

「はい?」


 棗さんが準備してくれた朝食を、もぐもぐと食べながら。

 ふと、聞いてみる。


「だって棗さんもそろそろ良い歳だし」


 結婚したいなって思う女性(ひと)くらい、いるんでしょう? と尋ねると、棗さんは困ったように笑った。