「そろそろ帰ろうか」



育が言った。



『……うん……』



帰りたくないよ…



何も話さなくてもこの空間が好きなんだもん…



例え一緒に住んでいたって、部屋の敷居が邪魔なんだもん…



兄弟って壁は乗り切れないんだもん…



「ほら、風邪引くぞ。帰るぞ」



『うん…』



私は渋々自転車に股がる。


育の後ろ姿…



毎日、見ている育の後ろ姿なのに、なんだかずっとずっと遠くにいるような気がした…