好きになった人は…双子の兄でした。【完結】

俺は再び来た道を戻る…



行きは登り坂だったが帰りは下り坂の為、風が俺の汗を拭ってくれたようで心地よい。









『……しゃ音楽家…山のうさぎ~上手に太鼓を……』







小さなかすれた声が聞こえた。



由奈……?



俺は自転車の急ブレーキを掛ける。



自転車を放り出し、声の聞こえた方へ走り出した。



『…ポコ……ポンポンポン…』



そこには由奈が居て…



川の水に片足だけ浸けて夜空を眺めていた。



声を掛けようかと思ったが…掛けずに由奈の元へ歩く。



『…いかぁあがでしょ…私しゃ…音楽家~山のうさぎ~』



由奈はまだ気づいて居ない…



俺はそっと後ろから抱き締めた…


一瞬ビクッとした由奈…




『…い……育…?』



「お前……その歌の二番知らないのかよ…」