「逃げてどうすんだよ!!!!」



初めて聞いた倫生の大きな声に、思わず肩を竦ませる。


そんな私の様子を見て、一瞬ためらうような素振りを見せたが、そのまま続ける。


丁寧に私の手を腕から外す。



「……何でだよ。そんなのおかしいだろ。
 そいつ、絶対困ってんじゃん。それ助けられんの、今俺らしかいないじゃん。
 ……見殺しにすんのかよ」



「……でも」


……でも。



倫生が怪我しちゃうかもしれないじゃん。


敵わないかもしれないじゃん。


倫生もいじめられちゃうかもしれないじゃん。



それを言葉にするには、あまりにも時間が足らなすぎて。


倫生は走っていってしまった。



「ここで待ってて」、と言い残して。