「俺ら、中3の時からやってんだ、楽器」


聞いてもいないのに、話し出す山神くん。


その様子は、顔には出ていないけれど、必死で話を繋げようとしているように見えた。



……もしかして、失恋したことを忘れさせようとしてくれているのかも。


あんなの見たら、失恋したんだってのは絶対わかるだろうし……。



そんな二人の優しさに甘えながら、私は相槌をうった。




「俺らの夢は、有名なバンドを組むこと」



堂々という彼ら。


冗談とか、非現実的な理想とかじゃないと思っている目。



……かっこいい。


夢がある人は、こんなにもかっこいいんだ。



「……なんて言ったら、何夢見てんだよって笑われるんだけどね」


また、気だるそうに笑う鈴谷くん。


それを見て、

「……ないよ」

と、私は思わずつぶやいてしまった。