「小さいあたしには、夢があったの。
でも、上達すればするほど、夢から遠のいていく。
ある日先生にその夢のことを話したの。
小学校上がってすぐ。
……見事に笑われたわ。
そんな子供っぽい夢捨てなさい、あなたには世界の頂点を取る力があるのよ、って」
才能、なんていうのは、誰からも憧れられるものだと思っていた。
そもそも私は、そんな才能がある彼女を羨ましいと思っていた。
……でも、それは自分の未来を一本に絞ってしまう、とても窮屈なものなんだ。
そして彼女はそれを、そんな小さい時から感じているんだ。
「それを聞いてあたしは完全に失望した。
あぁ、あたしは夢を見ちゃいけないんだって。
それからは真面目に、シックな音楽ばかり弾いてきたわ」
燃えるものがなくなった焼却炉がだんだん暗くなっていく。


