「え……!?」


私を正面から真っ直ぐ見て言う彼女。


意味……ない……?



「あたし、ピアノが大好き。
 2歳の時、それに気付いたの。
 ……その時からあたしのピアノは、天性の才能だなんて唱われ始めた」


オレンジの炎を見ながら、静かに話し出す。



「それから数年で、今の先生に出会ったの。
 あなたのピアノは世界に出ても通用する、なんて言われてね。
 その時のあたしはまだ3歳で、そんなの興味なかったけれど、お母さんが踊らされちゃって。
 仕方なく、あたしは本格的にピアノを始めたの。

 ピアノを習い始めたら、上達は早かったわ。
 新しいことが出来るようになるのは楽しかったし、賞を取るのは嬉しかった。
 ……でも、上手くなればなるほど、あたしから自由が遠のいていった」



小さく音を立てて、ボロボロの紙が炎の中で崩れていく。


字なんてとっくに読めない。