「私は……気づかなかったけど」 「そっか……じゃあ、俺の思い過ごしかな」 そう言って、深樹斗はまた音をとり始めた。 ……寂しそう? あんなに自信満々に見えた彼女が? ……深樹斗の言葉が何となくひっかかった。 「……静かだね」 「……そうだね。私たちじゃ、片付けるものもないし」 いつもの時間に片付け始めた私たちは、使う楽器がないから、少し時間を余らしてしまった。 けれどもう練習をする時間もないので、そのまま帰ることにした。