その後私たちは、ピアノで単音を取りながら、音程を確認した。


それのピアノはいつも、深樹斗の仕事だ。


深樹斗は誰よりもリズム感がよく、自分から進んでやってくれる。



その深樹斗の手が、突然止まった。


「……どうしたの? 深樹斗」


深樹斗は鍵盤をじっと見つめて動かない。



「……すごかったよね。彼女」


それが大槻さんのことを言っているのだと理解するまで、そう時間はかからなかった。


「……そうだね」



「でもさ、彼女……。
 何か、寂しそうじゃなかった?」


「え……?」


寂しそう?