その曲が終わると、周りの人は、彼らに拍手を捧げ、私を冷たく一瞬見てから去っていった。
好奇心が丸出しになっている視線を浴びて、恥ずかしくて逃げ出したくなった。
でも、さっきとは違い、私は動けなかった。
「君、大丈夫? こっちおいで、座れるから」
突然視界に入ってきた、黒いハンカチ。
そして、優しい言葉。
そっと見上げると、優しく笑う高校生くらいの男子。
さっき、歌っていた内の一人だ。
甘えるように小さくコクリと頷くと、彼は小さく笑って、背中を押して促してくれた。
そして、軽く頭を叩くから
私は彼の前で、すごい量の涙を流してしまった。
恥ずかしさとかも感じることなく、素直に。
初対面なのに……とても安心する大きな手。


