「……くそっ……!!」

琥珀は立って、じっと愛裕を見つめた。
その顔には表情はない。李家、次期当主としての顔だ。
しかし、その瞳には辛そうな哀しそうな感情を宿していた。
自分と愛裕の立場は違う……。
居場所も本当は違う……。
知ってるのに分かっているのに理解しているのに……こんなにも辛い。

これが恋なのか……?

なんで、こんなやつに恋をしたのだろう
なんで、犠だったはずのあいつを好きになったのだろう?
なんで、諦めたいのに恋してはいけないのに諦められないだろう?
答えは出てこない。……凄く胸が痛いのに

琥珀は愛裕の頬にかかっていた髪を退かした。そして、優しく頬を撫でる。壊れそうな繊細なものを扱うかのように…
しばらく時間がたって…

2つの影はゆっくりと重なった。

長い時間、重なっていた。
重なっていた影は、ゆっくりと2つに別れる。

「……お前は…その息吹ってやつが…好きなのか……?…俺は、お前が……好きになのに…!」

答えが帰ってこない問いをする琥珀。
まだ、瞳に涙を溜めながら眠りに堕ちている愛裕を見ながら…
愛裕の涙をそっと指で拭いた。
琥珀はしばらく愛裕の顔を見つめ、部屋から出ていった。

――――二人の心はすれ違いはじめた。