その時、愛裕はというと、呆然とたちすくんでいた。
運悪く、その光景を見てしまったのだ。
ちょうど愛裕がいた場所からだと本当にふたりがキスしているように見えて……

「あのカップルかわいい~」

「本当だぁ」

「お似合いだねっ」

周りの人々がそういって通り過ぎるのを聞き、愛裕はアイスを手から落とした。

「大丈夫~お姉さん」

「俺らと遊ぼ~」

たくさんの男が集まってきた。
いつもなら、たじたじしたり、天然っぷりを発揮しながら答える愛裕。
しかし、今回はそんな男達を払い退けて走っていった。
何も考えられなかった。