「その………いつもありがとう」

こころが落ち着いて…琥珀はそう思い、お礼を言った。
なんだかんだいって、愛裕はたくさんの事をしてくれるから……
無意識に口元が緩んだ。

「は…はい……」

なぜか動揺しながら愛裕は部屋から出ていった。




愛裕が救急セットを持ってくる間にオレは律にもらった資料を探し当てて読んだ。 そこにはあの家族について

「兄:木之本 桃矢」

とハッキリ書かれていた。

兄………
家族………

は、ははは………
そうか。 あの男は兄か。
「家族」なのか………

なるほど。
特別な顔をしているように見えたのは当 たり前か。
あれは「家族の前で見せる顔」だったん だな。
オレも姉上の前では別人みたいに見え るってあるやつにからかわれたことがあったっけ。
気を許した家族の前ではいつもと違う顔 をしてるのは当たり前か。

そうか。
当たり前か。
家族だもんな。

あ、あははは。
そうか。家族か。
兄、か………。

ま、たしかに「特別な相手」ではあるよ な。
生まれた時から一緒の「兄妹」なんだか ら。
はは、ははは………………

オレはあまりにも間抜けな勘違いにホッ とするやら呆れるやらでただ、力なく笑 うことしかできなかった。
そして、怒りにまかせて家宝の遠見の鏡 を叩き割ってしまったことを思い出して 大いにあわてるのだった・・・が